途上国から見ればウィンウィンではなかった一帯一路、軌道修正が始まった 多くは中国による「無用の長物」の押しつけ、巨大債務に喘ぐ途上国

途上国から見ればウィンウィンではなかった一帯一路、軌道修正が始まった

多くは中国による「無用の長物」の押しつけ、巨大債務に喘ぐ途上国

2022.4.11(月)塚田 俊三

塚田 俊三(立命館アジア太平洋大学客員教授。運輸省(現国土交通省)にて16年間、政策担当キャリアとして勤務した後、世界銀行に移り、12年間運輸プロジェクトのタスクマネジャー等を務めた。その後アジア開発銀行に移り、大型インフラプロジェクト開発のタスクマネジャーを8年間務める。2008年4月より、立命館アジア太平洋大学に移り、教鞭をとる。 専門は、BOT・PPP・PFI等を活用した社会基盤開発、プロジェクトファイナンス、国際経済、開発経済、環境経済、カーボンクレジット。取得学位は、工学博士(東京大学)、経営学修士(コーネル大学)、教養学士(東京大学)。)

ソビエト連邦時代、KGBの一幹部*1であったプーチンは、その後、国民的人気を誇るロシアの大統領となった。そのプーチンは現在、彼自身の最後の野望を実現すべく、ウクライナ侵攻という途轍もない実験を開始した。陸海空からの、容赦ない、無差別な軍事攻撃は国際社会から轟々たる非難を招き、プーチンは今や国際社会から完全に孤立してしまった。

 これが東洋の、権力闘争に熟達した指導者であれば、同じ夢を追うにしても、もっと巧みにことを進めていたであろう。それは、数千年前の昔からその国で採られてきた兵法に従い、深く、静かに潜行し、時が来れば立ち上がるとする戦法だ。

 これはプーチンが採ってきたような荒々しく、むき出しの攻撃とは対照的に、相手国を必要以上に警戒させることなく、しかもより深く侵入することを可能とする“トロイの木馬”方式である。

 そして、この東洋の指導者は、すでにシルクロードからの風を受けて、自らの夢の実現に挑み始めている。ただ、その全貌は、ときに別の衣をまとっていることもあり、外からは見え難いが、開始から数年を経過した今、その真の姿が明らかになりつつある。そこで本稿では、この問題を取り上げ、必要な分析を試みたい。

*1 Lieutenant colonel. Lieutenant colonel は米国等ではthree star officer であるが、ロシアではtwo star officer

欧米諸国による一帯一路への対抗策の策定

 言うまでもなく、ここに言う夢とは、習近平国家主席が手掛ける一帯一路構想であるが、欧米諸国は、同構想の途上国への急速な浸透を懸念して昨年相次いで一帯一路に対する対抗策を打ち出した。その先駆けとなったのは、米国の「Build-Back-Better World」構想で、バイデン大統領は、昨年6月12日、G7の場でこの構想を発表した。次いで、英国は11月1日に「Clean Green Initiative」を、そしてEUは12月1日に「Global Gateway」を発表した。

 これらの対抗策は、表現にこそ多少の違いはあれ、その狙いとするところは皆同じで、(i)普遍的価値の追求と(ii)高品質で透明なインフラの整備を挙げている。バイデン大統領は、これらのイニシアティブは、G7諸国が、強調して策定したものであるとして、その意義を強調した。

 一帯一路は、それが実施に移されてからすでに十年に近い年月を経ているが、ここに来て、G7諸国がこぞって対抗策を打ち出すこととしたのは何故だろうか。

 これを打ち出したのが、米中対立の最中にある米国だけであれば何ら驚くに足らないが、これまで一帯一路に深く係わってきたEUまでもが(EUはその加盟国の3分の2がすでに一帯一路の正式パートナーとなっている)一体となって同様の対抗策を打ち出すこととした背景には、何か共通の認識があったからなのであろうか。

 本稿においては、この問いに答えるべく、これまでの一帯一路の展開の経緯、その特殊性、さらには、その問題性を分析し、一帯一路の隠された狙いを明らかにしたい。

一帯一路までの経緯

 一帯一路が発表されたのは、今から約10年前、すなわち2013年であるが、それは全く新しい施策としてというよりは、2001年来進められてきた対外展開政策の延長線上に策定されたものであり、これに明確なフレームワークを付し、新たなブランド名を付けて、打ち出されたものにすぎない。

 ただ、それは習近平主席の肝入りで打ち出されたことから、それまでの中国企業の海外進出施策とは次元を異にし、国家戦略上より高次のプログラムとして位置付けられた(2017年に開催された第19回共産党大会において一帯一路は党の最高令である党規約に盛り込まれた)。

 そこで中国の海外展開政策の変遷を少しさかのぼってみてみると、1990年代までは、同政策は基本的には、国内志向型であり、外国資本の国内誘致が中心であった。

 これが、2001年のWTO加盟後は、一転して中国企業が海外市場に出、外貨を稼ぐことを奨励する「走出去」に変わった。それは、今まで厳しく制限されていた中国の国営企業にその海外進出を認めるものであり、その意味で画期的な決断であった。

 さらに2008年の世界金融危機後は「走進去」の下、政府は中国企業の海外市場への進出を積極的に推奨し、中国国営企業は海外市場で大いに稼ぐべきとされた。

 次いで、2012年には、中国企業は(特に規模の大きい国営企業は)、世界のトップを目指すべしとする「走上去」が打ち出され、企業の海外進出に一段と拍車がかかった。

 このように中国の国営企業の海外進出政策は、段階的に強化され、ついには「海外事業をこれら国営企業の中心的な収益事業とすべし」とするところにまで進んだ*2 。

 あえて言うならば、長らく厳しい国家統制のもとにあった国営企業が、ワイルド・ウエストに解き放たれ、西部の荒野で荒稼ぎして良しとする政府のお墨付きを得たに等しく、国営企業は、海外市場では、稼げるところでは派手に稼ぐとするカウボーイ・ビジネスを身につけていったと言えよう。

一帯一路、その特殊性

 上記でみた通り、国営企業が海外で手掛けるインフラ事業は、中国政府の周到な指導の下に進められてきたことから、ともすれば、それは、中国の経済協力の一端をなすと解されがちであるが、それは、以下にみる通り、OECD諸国が進める通常の経済協力とは大きく異なる。

 通常の経済協力であれば、支援対象プロジェクトは両国の援助機関同士の協議を通じて決められるが、一帯一路下の場合、プロジェクトの発掘は、中国の国営企業が自ら行い、当該企業がこれを途上国側に提案し、その合意が得られれば、実施するとする企業主体の経済活動である。

 国営企業の海外事業は、中国では“対外経済合作”と呼ばれているが、それは途上国に対する経済協力事業というよりは、むしろ、外国政府あるいは国際機関からの支払いを受けて行う商業的請負事業である。この点は、中国の統計上も国営企業に拠る海外事業は、“対外支援”とは分類されず、“対外経済合作”として分類されていることからも分かる。

 このように国営企業が海外で行うインフラ開発事業は、あくまでも採算ベースの請負事業であるので、途上国側からの支払いがなければ着手されない。他方、途上国は、通常インフラ工事に必要とされるような多額の資金は持ち合わせていないので、(それが如何に魅力ある提案であっても)発注には出しえない。この点は、国営企業も十分に承知しており、「資金が必要であれば、アレンジしましょう」と申し出、そこで途上国側が「頼む」と言えば、当該国営企業は、すぐさま現地大使館(経済商務処)と連絡を取り、商務部を通じ、中国の国有銀行に話が繋がれ、融資が実現することとなる。

 言い換えれば、一帯一路は、国営企業と国有銀行とが、二人三脚となって進める中国特有の海外インフラ・ビジネスであるといえよう。

一帯一路が内包する問題点

 このように、一帯一路下で進められるインフラ開発は、途上国における企業主体の商業的活動であるので、どうしても儲け主義に走りがちであり、このため、現地で種々の問題を引き起こすことになる。その主な問題点を列記すると以下の通りである。

【高コスト】:一般に中国企業が提案するプロジェクトは低コストであると解されているが、実は逆で、高コストのプロジェクトが多い。

 例えばケニアの鉄道プロジェクトは、通常価格よりも3倍も高いといわれており、モルディブの首都マリに建設された病院は、通常価格の2.6倍であったといわれている。これ程大幅な価格アップではないとしても、3~4割高めのプロジェクトはざらにある。例えば、マレーシアの東海岸鉄道プロジェクトは、いったんは前政権の下で調印されたものの、新しく選ばれたマハティール首相は、プロジェクト・コストが高すぎるとし、再交渉に持ち込み、当初の見積価格を3割3分引き下げることに成功した。パキスタンでも、政府はML-1鉄道のコスト見積もりは高すぎるとして、再交渉に持ち込み、当初見積価格を2割6分引き下げた。

 どうして、一帯一路の下では高めのコスト設定が可能なのかというと、それは中国からのローンはタイド(ひも付き)であり、また通常の経済協力案件のように国際競争入札に掛ける必要がないので、中国企業は他社の応札価格を気にすることなく、必要と見込まれる費用はすべて盛り込んで請負価格を設定することができるからである。

 さらに、施工段階に入ってからも、請負企業は、正当な理由がありさえすれば、当初の契約価格の更改を求めることができ、このような形でのコストアップも珍しくない。

【中国基準の押し付け】:中国の国営企業が一帯一路の下で受注する請負契約は、一種の「Turn-key契約」(設計から建設及び試運転までの全業務を単一のコントラクターが一括して請け負い、キーを回しさえすれば稼働できる状態で発注者に引き渡す契約)、あるいは「Engineering, Procurement, and Construction契約」(設計エンジニアリング、調達、建設を一括して請負う契約)である。その下ではコントラクターは、基本設計から詳細設計、建設、引き渡しに至るまですべて自分でコントロールできるので、請負企業は、自国で慣れ親しんだやり方で工事を進め、自国で製造される資機材をそのまま現地に持ち込んで、迅速に建設できるように詳細設計を書き上げることができる。

 これが通常の経済協力案件であれば、先ずコンサルタントが選定され、そこが基本設計、予備設計等を実施し、プロジェクトの詳細が決まると、建設業者・コントラクターが別途雇用され、コンサルタントが先に準備した予備設計に基づき、工事を実施するとする二段階方式が採られる。だが一帯一路の下では、中国の国営企業がこの両方の段階を一括して引き受け、プロジェクトの発掘から設計、建設、引き渡しまで一気通貫で行うので、自由度が高い。このため、プロジェクトの迅速なデリバリーは可能となるが、工事の施工は、事業者寄りの、効率一点張りのものとなり、途上国側の希望は反映されないものになりがちである。

 実際、一帯一路下でのプロジェクトは、そのほとんどすべてが中国の基準に従って設計されており、そこで使われる資機材もほとんど中国製である。

 例えば、インドネシアのバンドン・ジャカルタ間の高速鉄道プロジェクトでは、高速鉄道車両は勿論、通信システムからレールに至るまで、すべて中国で製造され、それがインドネシアに運ばれ、現地で組み立てられる形を取った。調達価格も比較的自由に設定できるので、そこに、不透明な費用(tea moneyやpalm greasing)も潜り込ませることもでき、それが後々プロジェクトの“円滑な実施”に役立つことがある。

利益を生まず巨額の維持費を垂れ流し続ける「ホワイト・エレファント」

【ホワイト・エレファント】:先に述べた通り、国営企業は政府が掲げる「走進去」、「走先去」の下、海外事業の拡大に走ろうとするが、これに熱心なあまり、途上国の債務負担能力とは無関係に出来るだけ大きなプロジェクトを作り上げ、これを途上国に提示し、自己の売り上げを増やそうとすることが多い。

 例えば、ラオスのような低所得国に対し、急峻な山岳地帯を突き抜ける高規格の高速鉄道をつくることは(その総延長の6割はトンネルか橋梁にせざるを得ず、途轍もないコストが掛かることは目に見えている)、自己のエンジニアリング能力の高さを誇示するだけの提案であり、ラオスの経済規模からみて(このプロジェクトの総コストはラオスのGDPの4割に達する)、到底正当化されうるものではない。

 プロジェクトが完成すればするで、巨額の維持運営費がかかるので、とんでもないホワイト・エレファント(無用の長物)を背負わされてしまうことになる。

【高い借入コスト】:これらの肥大化されたプロジェクトの費用を(当初の提示価格のみならず、正当な理由によるコストアップ部分も含めて)負担させられるのは(中国の国営企業ではなく)工事の発注元である途上国である。

 もちろん途上国側もこのような多額の費用を負担させられることは望まず、契約書にサインすることには躊躇するが、もしもそこに(通常は確保が難しい)必要資金をすぐさま貸してくれる銀行があり、また借入金の返済が始まるのも数年先のこととなるのであれば(長期資金の借入には通常5年程度のgrace periodが付く)、ついついこの銀行からお金を借りてしまう。

 これら資金の貸し手が、世銀、ADB等であれば、問題はさして大きくないが(世銀、ADBの貸付金利は1%程度。そもそも世銀、ADBがこのような返済の見込みのないプロジェクトにお金を貸してくれる訳はないが)、それが中国の国有銀行の場合は、その貸付金利は高く(譲渡性の高い融資を行うとされる中国輸出入銀行ですら2%台、ましてや、その4倍程度の融資実績を誇る中国開発銀行から借り入れた場合は6%台)、後々多額の返済義務を抱えることになる。

途上国側も蓋をし続けたい不透明契約

【不透明な契約条項】:中国との契約は、多くの秘密条項を含んでいる。例えば、途上国がデフォルトを起した場合、債務の肩代わりに天然資源の掘削権あるいは不動産開発権を中国企業に譲渡しなければならない、とする条項が含まれていることは稀ではない。

 資源の採掘権を外国に明け渡してしまうことには国民の反対が強く、その反対を受けて政府は中国と解約交渉に入らざるを得なくなることが多いが、いざ解約しようとすると、その際に課されるペナルティーの額が非常に高く設定されていたことが分かり、結局は契約解除を諦めざるを得なくなるのだ。

 解約とまではいかなくとも、契約の内容が不当であるとして、投資紛争に持ち込むことはできるが、いざ投資紛争に持ち込もうとすると、今度は「仲裁は中国国内で、しかも中国の手続きに従って行わなければならない」とする契約条項が効いてきて、結局は勝ち目はないことが分かり、諦めてしまうことになるのだ。

 一帯一路下のプロジェクトにはこのような一方的な内容の契約条項が数多く含まれており、その契約は原則外部秘となっている。

 実はこれらの契約を外部秘とすることを望むのは、むしろ途上国側という皮肉な実態もそこにはある。これらの秘密条項が明らかになれば、真っ先に批判されるのはこのような契約にサインした当の政権であるからだ。

【地域社会との軋轢】:一帯一路に係る問題は、このような経済的問題に留まらず、社会的な問題にも及ぶ。プロジェクトが始まれば、多くの雇用機会が生まれると現地から期待されることが多いが、対外経済合作には、対外労務提供も含まれており、現地が期待するほどの雇用を生まないだけではなく、逆に中国から労働者が大挙して入ってくることになる(最近のプロジェクトでは、現地の労働者を使うものが増えてきてはいるが)。

 これらの労働者はプロジェクト終了後も(現地での婚約等を通じ)そのまま居着くことがあり、その多くが、現地で小売業を始め、現地の小売業界に少なからぬ影響を与えることがある。

 例えば、太平洋諸島の一国であるマーシャル諸島では、小売業の6割が、中国人一世または二世によって運営されていると言われている。一帯一路は、時の政権からは歓迎されるが、一般庶民からは強く反発される所以である。

 以上、一帯一路が途上国でどのような問題を起こしているかを、典型的な事例に即してみてきたが、中国側は、一貫して、一帯一路は中国と途上国の双方にウィンウィンをもたらすとして、その意義を強調してきたが、実際上は、それは、(i)中国の国営企業にとっては請負事業増大の機会を*3、(ii)資機材のサプライヤーにとってはその資機材の輸出増の機会を 、(iii)国有銀行にとっては貸出増の機会を付与し、中国側には二重、三重の利益をもたらすものとなる一方、途上国にとっては益するところが少ない。そこでの「ウィン」は全て中国に帰属すると言って過言ではない。

 他方、途上国にとっては、「自力では作れないインフラを中国の支援のお陰で手に入れることができるのだから、それは途上国にとってもウィンではないか」とする反論がありうるが、もしも、当該インフラの規模が適切で、途上国が自力で維持管理できるものであればそうとも言えよう。だが、その施設が過大で、必要以上に立派なものであれば、当該施設は、完成後、収益どころか、累積赤字を生むだけのものとなり、それは途上国にとってはルーズ(lose、負け)でしかない。加えて、後々巨額の返済義務が残るのであれば、それはウィンウィンどころの話ではなく、途上国にとってはまさにルーズ・ルーズとなる。

そしてたいがいの場合は、そのようになっている。

ついに軌道修正が

 一帯一路は、2013年に導入されて以来、急速に広まっていったが、実はその投資額は2016年をピークに、2017年から減少に転じている。これは一つには一帯一路の当初の目的であった「国内の余剰生産力のはけ口」としての役割が一巡したことにもよるが、それだけではなく、上記でのべたような問題点が徐々に噴出し始め、受入国側で一帯一路に対する警戒感が高まってきたことにもよる。

 このような問題事案の存在は、現地の状況に日々接する大使館・外務部においては既に認識されていたところであるが、これら外務部の認識・懸念は、政府部内で圧倒的な力を有する(一帯一路の主務官庁である)商務部の前にはかき消され、政府全体の意見とはならなかった。

 しかし、このような現地での問題は、党中枢の耳にも入り始め、一帯一路の進め方について見直しが行われ、党幹部が主宰する一帯一路建設工作指導小組からの指示もあり、2018年4月に、これまで商務部中心に進められてきた一帯一路の推進体制は大幅に改革され、国務院に新しく「国家国際発展協力署」が設置されることになった。同協力署には、それまで商務部内に置かれていた対外投資経済協力司が移管され、その運営は国家発展改革委員会が主導し、商務部、外務部がこれに参加する形となり、政府部内で外務部の声がより強く反映されるようになったのだった。

 党本部から発せられる指導方針にも変化がみられた。2018年8月に開催された“一帯一路建設工作5周年座談会”において習近平主席は「一帯一路を質の高い発展の方向に変化させる必要性」があると述べ、さらに、2019年4月に開催された第2回「一帯一路国際協力ハイレベルフォーラム」においては、同主席は「国際スタンダード」を尊重することの重要性に言及するとともに、「一帯一路上のプロジェクトは、商業財政上の持続可能性を確保」したものとすべしであると述べた。これを受け、一帯一路案件に対する政府の審査は各段に強化され、その選定はより厳格なものとなった。

 同時に、投資先の分野も、従来からのハードウエア中心から、情報通信技術を始めとするソフトウエアも含めた、より広範なものへと変わっていった。また、情報通信関連技術は民間企業が多くを有することから、一帯一路への民間企業の参入も促された。さらに、一帯一路の支援対象は面的な広がりもみせ、“境外経済貿易合作区”の設置やスマートシティーの建設が打ち出された。これらの面的支援の拡充は、一時的な建設労働者に限らず、より幅の広い分野の要員の海外移転を促すことになり、それは現地での人的ネットワークの強化に繋がり、後々別の機能を果たすことになる。

裏に隠された地政学的な意図

 冒頭、欧米諸国が昨年相次いで一帯一路に対する対抗策を打ち出すこととしたのは、何故なのか、という問いを投げかけたが、もしも、中国政府が、一帯一路の問題点を認識し、これら問題を解決すべく、必要な改革に着手したのであれば、今暫くその推移を見守るべきで、今の段階であえて対決姿勢を打ち出す必要はなかったのではなかろうかとの見方もある。

 にもかかわらず、欧米諸国が、あえて、この段階で、強硬な姿勢を採ることとしたのは、何といっても、一帯一路が途上国で引き起こしている問題が欧米諸国の基本的価値観に抵触し、これ以上看過しえないとみたからであると思われる。

 だが、それだけでは、欧米諸国は、これ程強硬な措置を取らなかったと考えられるが、あえてかかる措置を、しかも、G7諸国が一体となって取ることとしたのは、一帯一路の裏に隠されてた中国の地政学的な意図を見て取ったからであると推測される。

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