慰安婦「強制連行」なし 完全な公式明言

慰安婦「強制連行」なし 完全な公式明言 古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授) 【まとめ】 ・「強制連行」示す物証は日韓ともにない、と政府が国会で明言 ・慰安婦問題の核心の不当性、虚構性が明白に ・日本非難の客観性は否定され、河野談話の虚構を再び提起 日本の慰安婦問題は虚偽の証言や報道にハイジャックされ、長年の間、日本を貶める政治プロパガンダとして悪用されてきたが、その虚構の核心だった「強制連行」が国会の公式の場で日本政府の代表により改めて正面から否定された。 日本の官憲による一般女性の強制連行という事実はどこにも根拠はないという日本政府当局者の公式の言明だった。その結果、この「強制連行」を否定せずに、にじませた1993年の河野談話の虚構が再度、提起される結果ともなった。 この慰安婦問題の新たな論議は3月22日、参議院の文教科学委員会の公式の審議の場で起きた。議題は慰安婦問題だった。問題を提起したのは有村治子参議院議員、自民党、当選4回で、内閣府特命担当大臣として女性活躍や行政改革というテーマとも取り組んできた実績がある。 有村議員に与えられた時間は30分、萩生田光一文科大臣や内閣府担当官多数を証人に招いての質疑だった。この時点で慰安婦問題をあえて取り上げた理由は今年に入って、韓国ではソウル地裁が元慰安婦だと称する人の主張を認め、日本政府に損害賠償を求める判決を下したことや、日本の中学社会科教科書で山川出版社の教科書がこれまで日本への不当な糾弾の手段としても使われてきた「従軍慰安婦」という呼称を復活させたこと、だという。 この委員会で有村議員は慰安婦問題が国際的に日本に不当な誹謗の効果を招いてきたことを指摘し、とくに「強制連行」という点に議論を絞って、政府側証人の見解を求めた。 慰安婦問題では朝日新聞が吉田清治という人物の虚偽の証言を事実として大々的に報じたことなどが原因となり、「日本の軍や政府当局がアジア各地の中国、朝鮮、インドネシアなどで一般女性を組織的、体系的に強制連行して、日本軍用の慰安婦とした」という主張が日本非難の基礎となった。 この虚偽の主張からさらに「従軍慰安婦は日本軍の性的奴隷だった」とか「従軍慰安婦は合計20万人にのぼり、その多くが虐待や虐殺までされた」という虚構の日本糾弾が広がっていた。 この点については有村議員は問題の基本部分の提起として次のように辛辣に述べた。 「そもそも、吉田清治なるウソにウソを重ねた詐欺師が、朝鮮半島で暴力の限りを働いて、幼子から母親を引っ剥がし、千人近い慰安婦の人狩りをしたなどという完全な作り話の数々を創作し、これらの情報が朝日新聞によって長年にわたり何度も喧伝されてきました。 2014年に朝日新聞が18本、少なくとも18本の記事を取り消すまで、実に30年以上もの間、日本を不当におとしめる虚偽情報を放置してきたのであります。吉田清治を担いだ北海道新聞も、裏付け取材ができていなかったことを認めて謝罪し、8本の記事を取り消しています。新聞赤旗も記事3点を取り消し、謝罪をしています。これだけの謝罪して取り消された記事がございます。 何年もの間虚偽を喧伝し、放置してきた報道の大失態によって、また、千田夏光氏が著書で示した根拠のない慰安婦の数が検証もされずに学者や研究者に引用をされ、孫引きをされ、韓国世論に火を付け、国連や国際社会にばらまかれるなど、史実に基づかない偽情報によって日本が不当に非難し続けられたこの国際政治の損失をもう一度再現させるようなことは許されないと考えます」 以上の有村議員の発言は慰安婦問題の核心の不当性、虚構性をずばりと衝いていた。こうした斬るように鋭い指摘が参議院の委員会という国政の主舞台でなされたこと自体がこの慰安婦問題の健全化ともいえよう。ただしその日本の名誉を守るための是正措置はあまりに長い年月がかかったということである。同議員の言葉の鋭さには、不当に名誉を傷つけられた側の積年の怒りが示されたともいえよう。 ▲写真 参院・文教科学委員会で質問に立つ自民党・有村治子参院議員(2021年3月22日) 出典:参議院ホームページ 有村議員はさらにこの慰安婦問題で日本に濡れ衣を着せることになった「強制連行」について政府側に質問した。 慰安婦は日本軍が関与したとはいえ、商業ベースでの売春だった。女性たちの募集は民間の業者が受け持ち、女性たちの応募に基づき、契約や契約金に拠って日本軍将兵への性のサービスを売る行為であり、ビジネスだった。なにしろ売春自体が合法だった時代の現象だったのだ。 この出来事を売春自体が悪とされる現代の倫理で判断すれば、まちがいなく悪である。女性たちにとっての悲劇でもあった。貧困や家族の負債などにより、カネのためにやむをえず、応じた女性も少なくなかっただろう。その点では自分の意思には反した例もあったといえよう。 だが慰安婦問題で日本のなかの活動家や外国の反日志向の勢力による最も険悪な糾弾の矢は、慰安婦集めが日本の軍隊や政府が主体となって、組織的に一般の女性を無理やりに捕らえ、慰安婦として強制的に連行していた、とする断定に基づいていた。だがこの「強制連行」というのが虚偽の断定だったのだ。 その点についての有村議員の政府側への質問はまず以下のようだった。 「河野談話が発表されてから28年がたちましたが、強制連行を示すような文書や物証はその後出てきているのでしょうか」 河野談話に触れるのは、この談話が日本政府自らの「強制連行」の自認という意味にも解釈されるというゆがんだ歴史があったからである。 日本政府代表の参考人、正確には総理大臣の責務を担当する内閣府の代表が以下のように答えた。 「これまで日本政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述は見つかっていないところでございます」 有村議員は続けて質問した。 「では、この間、強制性を裏づけるような公文書、証文等が韓国から提示されたことはあるのでしょうか」 …

Korean University Professor Fined for Stating “’Comfort Women’ Had Free Will”, Currently Still in Dispute

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中国による拉致強制結婚問題

中国による拉致強制結婚問題が、東南アジアに深刻な人権問題をもたらしていることも明らかになってきた。  今年5月、中国・雲南省昆明の公安局は、雲南省とベトナム国境地帯でベトナム人女性を拉致し、中国国内への人身売買を行ってきた中国人容疑者23人を逮捕した。  雲南省の国境地帯を経由して、少なくともベトナム人女性11人が、中国に人身売買された実態が明らかになった。  同公安当局によると、警察官が昆明鉄路局管轄の河口北駅の待合室で、乗客が購入した切符に印字された情報と身分証明書情報との照合確認を行っていた際、この女性の情報が一致しないことが発覚した。  中国では鉄道乗車券を購入する際、名前と身分証番号の登録を求められる。乗車券にもその情報が印字されていて、他人の切符で乗車することができない。  不信に思った警官が職務質問すると、その女性は中国語を全く話せないばかりか、恐怖で体を振るわせ、凍りついたような表情をしていたという。  一方、その女性に同行していた中国人の男は慌てふためき、警察官が女性に質問するのを遮ろうとしたものの警察官に止められた。取り調べの結果、次のような実態が明らかになった。  その女性は、別の男性の中国人の妻として3万元(約48万円)で「買われた」ばかりのベトナム人女性であることが判明。  さらに、女性によると「ベトナムから拉致され、中国に強制的に連行された」ことも分かった。 東南アジアで15歳以下の児童や若い女性を拉致して中国に連行、中国人男性と強制的に結婚させる違法な「花嫁売買産業」が、中国の経済発展とともに巨大産業になっている。  中国当局の調べでは、中国人男性と結婚するベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマーなどの東南アジア女性は、年間数万人以上に達する。  さらに、中国南部の広東省、雲南省、貴州省などには、闇組織の仲介業者に秘密裏に登録されている花嫁予備軍のASEAN(東南アジア諸国連合)の女性が3万人、4万人いるともいわれている。  今年6月、国連が国際的人権組織のアムネスティ・インターナショナルとの共同調査で、児童を拉致して強制結婚させるなどの犠牲者は、世界で7憶6500万人にも上ることが明らかになった。  国連規定や国際法では、双方同意の有無に関係なく、金銭と交換により結婚目的で国外に連れ去られた場合、人身売買等の罪に問われる。  中でも中国はその犯罪確率が極めて高いことで知られ、その実態は年々深刻化している。  生まれ故郷から数千キロも離れた言語や文化が全く違う場所に連行され、孤立無援で性的虐待や暴力を振るわれるケースがほとんどだ。  拉致された女性は、「倉庫入り」と呼ばれるデートサイトや微信(ウィーチャット)にまず写真が掲載され、ブローカーが男性らに売り込んでいくという。  先の昆明での事件では、昆明公安局の捜査の結果、河南省の中国人男性数人が、雲南省のベトナム人女性1人につき4万~8万元(約65万~130万円)で常習的に「買わせて」いたことが新たに判明した。 背景には、巨大な犯罪グループによる花嫁売買産業の存在がある。  拉致したべトナム人女性を中国に入境させた後、中国人ブローカーによる仲介で、河南省や雲南省などの未婚の中国人男性に“売って”いたのだ。  中国公安省は中国全土での強制捜査で、人身売買組織を摘発。中国人容疑者約600人、犠牲者の未成年者約180人を救出した経緯があるが、「現状は、モグラたたき。氷山の一角に過ぎない」(アムネスティ・インターナショナル)という。  一方、パキスタンでも同連邦捜査局が5月、少女たちを拉致し、強制結婚という形で中国に入国させ、実際には売春を強要した容疑で中国人8人を逮捕した。  捜査当局は「捜査が進むめば、逮捕者がさらに増えるだろう」と危機感を募らせている。  こうした違法な人身売買産業を後押ししているのは、中国の農村地帯における花嫁不足だ。  40年近く続いた一人っ子政策により、働きと手として男児を好む中国では男女の人口比に深刻な偏りが生まれた。  男性は女性より約3400万人多い(2018年統計)。その結果、中国人女性との結婚が望めない男性が数千万人以上に達するといわれている。  そのため、拉致などの違法手段に訴える以外に、東南アジアに花嫁を“買いに行く”「お見合い結婚ツアー」が活況を呈している。 中国のネットには、「東南アジア妻5万元」「3か月以内の結婚可。原則、処女。1年以内に嫁が逃亡した際、別の嫁紹介の3大保証つき」などと、公然と人身売買の広告が掲載されている。  結婚できない男性は中国の農村地帯だけではない。  最近では経済発展に伴う女性の地位向上による、高学歴で自尊心の高い中国人女性を嫌い、従順な東南アジア女性を好む都市部の中国人男性も増えてきたという。 …

学生が勤勉な韓国、それでもノーベル賞が平和賞たった1個だけ

「北朝鮮と一つになれば日本に勝てる」──これが親北政策に邁進する韓国・文在寅大統領の狙いかもしれない。だが、実際の「統一朝鮮」の実力となると、未知数だ。統一朝鮮の国力は、日本を凌ぐのか、イデオロギーや感情を超えて、3国の数字を冷静に比較した。  仮に南北統一が実現した場合、その国力は日本を上回るのか。教育の分野で、日本、韓国、北朝鮮の実力を比較した。  韓国の教育熱は日本の比ではない。大学進学率は約70%を超え、多くの高校生が一日10時間以上の猛勉強をして大学受験に臨んでいる。  そこにあるのは、激烈な学歴社会だ。2018年12月に韓国教育開発院が発表した調査によれば、大卒者の3人に1人が未就職となっている。朝鮮半島情勢に詳しいジャーナリストの李策氏はこう指摘する。 「大卒者ですらこの状況で、高卒や専門学校卒では、まともな仕事にありつけない。いまの韓国の子どもたちにとって、有名大学に進学して大企業に入ることが至上命題となっている」  大学進学後も、勉強漬けの日々が待っている。近年は企業の就職試験でTOEICの点数を厳しく問われるので、学生たちは英語の勉強に力を入れる。また、低ランクの大学に入った学生の中には、就職活動を諦めて公務員試験に絞る人も多く、大学の授業が終わった後は、予備校で深夜まで勉強する学生も珍しくないという。 これだけ学生が勤勉な国柄にもかかわらず、韓国のノーベル賞受賞者は、2000年に平和賞を受賞した金大中氏ただ1人。 「韓国では商取引や金融、ITに関する教育に力を入れていて、純粋なアカデミズムが置き去りにされている。基礎研究に力を入れる土壌が薄いんです」(同前)  一方、北朝鮮の大学進学率は10%にとどまるが、これは北に最長10年もの兵役義務があることが影響している。長年北朝鮮を取材しているジャーナリストの鄭美華氏はこう指摘する。 「多くは中学卒業後に兵役に就くため、年齢的にもそのまま仕事をしたり家庭を持ったりと、なかなか大学に進学しづらい環境がある。大学は一部のエリート層のためだけの施設になっているのが現状です」 ※週刊ポスト2019年8月2日号

犯罪組織を使った香港デモ潰し工作の卑劣さ デモ隊を襲撃した白シャツの男たち、その正体とは

(黒井 文太郎:軍事ジャーナリスト)  デモが続く香港の元朗区で7月21日、白シャツの男たちの一団が、デモの参加者たちを襲撃した。男たちは地元の犯罪組織「三合会」のメンバーらとみられている。  この暴力行為に対し、香港警察の動きがきわめて遅かったことから、三合会と香港警察の癒着を指摘する声も現地では多い。だが、警察は「対応が遅れたのは多忙が理由」として癒着を否定している。  ただ、彼らはカネで動く連中であり、なんの報酬もなく自発的にこうした組織的行動をすることはまず考えにい。何者かの依頼によってデモ潰しに動員されたことは疑いない。おおもとはおそらく中国政府ということだろうが、それこそ地下社会のネットワークを介してカネが動いたのだろうと推測される。 世界に広がった黒社会ネットワーク  では、この三合会とは何者なのか?  三合会は、香港最大の犯罪組織ネットワークである。香港には、紅衛兵残党など本土から流れてきた無法者たちを源流とする「大圏仔」と呼ばれる新興の犯罪グループなど、他にもいくつか犯罪組織があるが、それらを除いて三合会には約10万人のメンバーがいるとみられる。  三合会の起源は古く、17世紀にさかのぼる。元々は満州族の清朝支配に抵抗する漢民族の民族団体として発足した。1912年の清朝打倒と中華民国創設にも尽力したが、1925年に孫文が死去すると、中国全土で軍閥が割拠して秩序が崩壊。それに合わせて三合会もアウトロー化していった。 その後、1949年に中華人民共和国ができると、三合会は本拠地を香港に移転。香港を拠点に、麻薬密売をはじめ、犯罪組織が手掛けるほとんどの犯罪に手を染めるようになる。  ただし、現在は他国のマフィアと同様に、経済犯罪に主力をシフトさせつつあるようだ。最盛期の1950年代には香港に30万人程度の構成員がいたといわれるが、英国統治当局の取り締まりもあって、人数は3分の1にまで減少していった。  三合会はまた、世界各地に散った中国系移民社会にも根を張った。中国系マフィアを扱った欧米のメディア記事には、三合会の英語名である「トライアド」という言葉が頻出する。末端を合わせると世界中に合計30万人程度のメンバーがいるのではないかと推測される。  とくに勢力が強いのは、やはり華僑が根付いている町だ。たとえばロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨーク、ロンドン、マンチェスター、パリ、アムステルダム、東南アジア主要都市などである。ただし、 世界の中国系移民社会には、香港系以外に台湾系や本土系の黒社会も複雑に入り込んでおり、欧米の捜査当局やメディアが「トライアド」と呼んでいても、正確には香港を本地とする三合会との正確な区分が難しくなっている。  以上を整理すると、現在の三合会とは、香港を拠点として世界に広がった黒社会ネットワークということになる。ただし、日常的に国際的な活動を行っている組織はそう多くなく、香港の三合会のほとんどは地元密着型の組織である。 三合会を構成するビッグ3の組織  三合会はあくまでも“ネットワーク”なので、三合会という名称の元に統 制された1つの組織体があるわけではない。つまり、きわめて排他的・閉鎖的な中小の独立組織が、各地でそれぞれ縄張りを持っているのだ。それぞれの組織は伝統的儀式を重視し、疑似ファミリー化した鉄の掟で結束する。各地域での縄張りを地盤に活動しており、しばしば隣接する組織同士が激しい抗争をしている。  香港で三合会を構成する組織は50ほどあるとみられるが、現在、そのうち活動的なのは14組織とみられる。「新義安」「14K」「和勝和」の3組織が、いわばビッグ3といえる。それぞれがどんな組織なのかをみていこう。 ・三合会の最大組織「新義安」  新義安は潮州系で、東南アジアをはじめ、諸外国の華僑社会に強い。創設は1919年で、創設者は向前。第2次世界大戦時に日本軍に協力して急成長したが、戦後、1949年に非合法化された。  首領の向前も台湾に逃れて、そこから組織を指揮した。やがて潮州人脈からの国際ネットワークを武器に香港でも復活し、現在の構成員は5万5000人という三合会の最大組織となった。組織のトップはその後、向前の息子の向華勝に移っている。  新義安は九龍地区に長く存在していたスラム街および九龍地区の繁華街を地盤とし、売春、賭博、企業恐喝のほか、東南アジアの「黄金の三角地帯」産出のヘロインの流通を牛耳った。  また、1980年代以降、香港映画界を長く支配した。ちなみに向華勝の実弟の向華強(チャールズ・ヒョン)は元俳優・監督の大物映画プロデュー サーで、有力映画会社「三和」の経営者である。  1988年に中国共産党と接触し、以後、中国本土に積極的に進出した。三合会の各組織のなかでも最も中国共産党政権と関係が深いとみられる。 ・欧米にも根を張る「14K」  1945年、国共内戦期に、国民党軍人人脈が広州で結成。結成場所の住所にちなんで組織名が付けられた。1949年の中国共産党政権の誕生で香港に本拠を移す。三合会の組織の中でも組織の統制が緩く、傘下の各組織の独立性が強い。  もともとは東南アジアからの麻薬密売を主としており、海外にも積極的に進出した。米国や欧州(中でもオランダ・アムステルダムの麻薬密売 ルート)にも広くネットワークを広げたが、海外進出の過程ではかなり暴力的な事件も多く起こしている。また、窃盗や偽造も手掛け、中国本土への盗難車大規模密輸も行っていた。一時は国際的にも三合会最大の勢力となっていたが、現在では縮小している。 …

白シャツ軍団大暴れに中国の影、香港は危険水域に 懸念される習近平政権の「果断な行動」

(福島 香織:ジャーナリスト)  7月21日に香港で起きた異常な出来事を整理したい。6月以降の香港で異常事態が続いているので、もはや私たちメディア側も麻痺しかかっている。だが21日の事件は、一線を越えたような印象を受ける。  この日、43万人の平和デモがあり、中聯弁(中央政府駐香港連絡弁公室=中国の香港における出先機関、大使館に相当)への抗議デモと警察による武力鎮圧があり、そして香港MTR・西鉄線の元朗駅界隈で発生した謎の白シャツ集団による無差別暴行事件があった。  事態は明らかに危険水域に差し掛かっている。つまり、香港政府だけでは香港の治安を維持できない、と中国政府がいつ、そう判断してもおかしくない、という意味で。 強制排除された中聯弁前のデモ隊 7月21日に発生したことを時系列におさらいしていこう。  まず日中、民陣(民間人権陣線)呼びかけの平和デモが行われた。これは主催者発表で43万人が参加。警察発表で13.8万人。国連人権理事会で「国連はどうして中国を人権理事会から外さないのか」と国連の姿勢を批判しつつ中国の人権問題を告発した香港の人気歌手、デニス・ホーら著名人の姿もみられた。平和デモは午後3時すぎにビクトリアパークを出発し、湾仔が終点地の予定だった。しかしデモ隊の一部(主に勇武派)はそのまま上環まで進み、中聯弁を取り囲んだ。平和デモの主催者である民陣サイドは、中聯弁までいく予定はなかったといっている。  午後8時前、中聯弁を取り囲んだ1000人前後の群衆の代表が中国語と英語でデモ隊が要求する5項目(「逃亡犯条例改正案の完全撤回」「警察の暴力に対する謝罪」「デモ隊への暴徒扱いの撤回と謝罪」「逮捕者の即時釈放」「キャリー・ラム行政長官の辞任」)を読み上げ、「あらゆる方法で香港を守護する」と宣言。その後、彼らは中聯弁の正門に向かって、卵を投げつけたり、スプレーペンキで監視カメラを破壊したり、中華人民共和国の国徽に墨汁を投げかけるなどの暴行を開始した。 香港警察は8時7分に、中聯弁前の群衆を強制排除することを通告し、午後10時10分、ブラックフラッグ(武器使用の合図)を出したのち、陸橋の上から催涙弾やゴム弾を群衆に打ち込んだ。  香港警察は、デモ隊の強制排除においては「ブルーフラッグ」(即刻解散せよ)、「ブラックフラッグ」(これから武力行使による強制排除を開始する)の警告合図を出すルールがある。6月12日にはこの手順を踏まずにいきなり群衆にゴム弾に発砲したことが、その後のデモ拡大の一因となっているが、今回はきちんと手順を踏んだといえる。およそ36発のゴム弾を撃ちこみ、7月22日午前2時48分までにデモ隊の強制排除を完了、警戒線を解いた。 白シャツの暴漢が黒い服の乗客を無差別攻撃  この中聯弁襲撃は、香港人の敵意がまっすぐ中国政府に向いたという意味で衝撃的だった。だが、ほぼ同じ時刻に、それより恐ろしいことが深センと香港の境界に近い新界地域の元朗で起きていた。 午後8時半ごろ、白いシャツを着て右手首に赤いリボンを結んだ、いかにもその筋の人間らしい強面の男たちが元朗に続々と集まっていた。人数は確認できないが、目撃者がネットにあげた写真をみると、数十人から100人ぐらいは集まっているのではないだろうか。このとき、親中派の立法会議員、何君堯(ユニウス・ホウ)がこの白シャツの男たちと握手をして、「あんたは俺たちの英雄だ」といった言葉をかけられている様子が通行人に目撃されており、市民は警察に通報していた。  午後10時57分、白シャツの男たちは棍棒のような武器を手に手に持ち、地下鉄の元朗駅に集結。構内に突入し、黒い服を着ている乗客を無差別に殴り始めた。  黒い服を狙うということは「反送中デモ」参加者を狙ったものと考えられる。だが、デモ参加者でない人が黒い服を着ている場合もあるし、負傷者には黒服でない者も含まれていた。市民はこのとき再び警察に通報、2人の警官が現場に来て、白シャツの何人かと話し込んでいる様子が目撃されている。 元朗駅構内で数十名の負傷者が倒れ、いたるところに血痕が飛び散っている様子が、目撃者がネット上にあげた動画で確認できる。妊娠3カ月の女性が倒れている様子もネット動画にあげられていた。また、立場新聞の女性記者も現場に居合わせ、その騒動を撮影していたが、彼女も暴徒に殴られ、悲鳴をあげている様子が映っている。ほかにも複数のメディア関係者が殴られて負傷しているという。立場新聞の報道によれば、妊娠中の女性は病院に搬送され適切な措置を受けて母子ともに命に別状はないとのことだった。だが、1人の男性は一時意識不明の重体に陥り、今も入院中という。  午後11時11分に香港鉄路は西鉄線の列車を元朗駅に停車させない措置をとった。午後11時26分になってようやく警察が到着したが、そのときは白シャツ軍団の嵐のような1回目の攻撃は終わっていた。  7月22日午前零時17分、白シャツ軍団は天水圍駅(動画では天水圍駅と思われる)に突入。列車内に乗り込み、逃げ場のない状況で乗客を無差別に殴り始めた。乗客の中には傘で応戦するものおり、大混乱となった。このとき駅構内に警官、警備員はいなかった。 警察の防暴部隊が到着し、防暴隊に保護されるような恰好で白シャツ軍団が現場から去ったのは午前2時を回っていたという。白シャツたちは警察に南辺圍村当たりにまで連れてこられ、そこで解散させられたという。 警察は事前に襲撃を知っていた?  以上は目撃者やSNSの情報を総合して整理しているだけなので、事実誤認があるやもしれないことをお断りしておく。だが公式発表、公式メディアでは、整理された情報がまとまっておらず、事件全体がわからない。この白シャツ集団が何者なのか、警察が彼らを逮捕してきちんと取り調べているのか、いずれもはっきりしていない。  実際、実に不可解なのが警察の対応だ。  実は7月21日早朝、元朗区議の麥業成(ジョニー・マック)は、元朗の黒社会が雇われて「反送中デモ」の報復に出る可能性があるとの情報を得て、警察に連絡していた。すると警察側は「すでに対応のための配置を整えている」とのことだった。麥業成は日本語も使える日本通で、反共、民主派の立場を比較的鮮明にしている人物。香港で唯一といっていい台湾政界ともコネをもつ区議だ。 7月20日、元朗のとあるホテルで、地元マフィアが襲撃参加者に募集をかけている、という噂が流れていた。麥業成の証言が正しければ、警察は21日夜の襲撃を事前に知っているはずなのに、現場への到着は白シャツ軍団の襲撃が終わったあと。元朗駅に最初にやって来た警官2人は白シャツの男がこん棒を持っているのを確認しながら何もしなかった。警察側の言い分は2人の警官は装備が不足して白シャツ軍団を止めることができず、35分後に支援部隊が到着するまで待機していた、という。  ちなみに、警察側は出動が遅れたのは、上環の「中聯弁」前での官民衝突で警察の手が取られて人員不足であったことと、この夜、元朗区で火事と3件の喧嘩の通報が同時にあったからだと説明。あたかも、お前らデモ隊のせい、と言わんばかりだ。  またこの騒動で24~54歳の男6人を現場で違法集会容疑で逮捕したとしているが、どう考えても白シャツの男たちを殺人未遂、傷害罪の現行犯で逮捕をすべきではないか。警察の調べでは彼らは「三合会=マフィア」関係者で、「14K」および「和勝和」と呼ばれる団体の構成員だと明報などが報じている。香港警察と香港マフィア、三合会が癒着しているというの は、香港ノワール映画のお約束でもあり、そう考えると今回の騒動は香港警察が一枚かんでいる、と考えるのが普通だろう。 本当の黒幕は中国政府か  では三合会に金を払って、襲撃させたのは誰なのか。親中派の立法議員、何君堯の関与が噂されているが、彼は「言いがかりだ」「一緒に飯を食ってただけだ」と言って否定し、「むしろ警察には襲撃者全員を捕まえろと言っている」とメディアにコメントしている。ちなみに、何君堯の事務所や先祖の墓が荒らされていることが7月22日に分かったが、これがデモ隊からの報復だという説と、裏切られた(?)マフィアからの報復だという人と両方いる。 …